No.20
「Blue Jays」Justin Hayward・John Lodge

先日、東芝の6GB8という真空管を手に入れ、プッシュプルで作成したところ、6CA7やKT88とほとんど変わらない音であまりおもしろくなかったので、パラシングルに作り直したところすごく深みのある音になりびっくりしました。理論上はプッシュプルのほうが良いはずなのに、わからないものだなと思いました。6GB8は東京オリンピックの時に使われた有名な球なのですが、今でも十分使用でき、すばらしい音で鳴ってくれます。
今月はムーディブルースのシンガーで有名なジャスティン・ヘイワードとジョン・ロッジのアルバム「Blue Jays」です。このアルバムは30年くらい前に買ったものですが、当時よく聞いていました。どの曲も感動的な美しいメロディとハーモニーで今でもこれほど美しいアルバムはなかなかないのではないかと思います。レコードはキズだらけになってしまい最近またCDを手に入れ、時々聞いています。ムーディブルースのアルバムも良いものがたくさんありますが、私はこのデュオのアルバムが一番好きです。ジャズばかり聞いてないでぜひ'70年代のロックやポップスをもう一度聞いて下さい。すばらしいものがたくさんありますよ。

 


No.19
「pure acoustic」

今月もJAZZではありません。大貫妙子さんの最高のアルバム「pure acoustic」です。曲は彼女が以前作った曲を、チェロ、バイオリン、コントラバス等のアコースティックのアレンジでリニューアルしているものです。
きれいな日本語で、美しい発音で、しっかりと言いたいことが伝わってくる。こんなすばらしいアルバムを聞いていると、現代のジャズ(インストもボーカルも含めて)が、いかに精神的なレベルが低いかがよくわかります。日本人は、英語で歌っては自分の持っているものが絶対に聞き手に伝わりません。美空ひばりさんのジャズを歌ったアルバムを持っていますが、アメリカのスタンダードナンバーを日本語でしっかりと歌い、しっかり伝わってきます。ただ、バックのアレンジはナットキングコール・バージョンのコピーだったりするのでいただけませんが。
この「pure acoustic」は、音楽のジャンルを超えたすばらしいアルバムだと思います。JAZZというものにこりかたまっている人には理解できないかもしれませんが、声、楽器、アレンジを通して演奏者の心を聞き手に伝える、また、それを聞き手が受けとめる。そこに音楽の持つ本質の1つがあると思います。自己満足の押しつけでは、音楽ではありません。

 


No.18
「Sweet & Simple」 HELEN FOREST
with ARTIE SHAW & HIS ORCHESTRA

1月1日の新聞を読んでいたら、アーティ・ショウが94歳で亡くなったとの記事が載っていました。
私が若い頃アーティ・ショウ楽団をバックに歌うヘレン・フォレストを何度も聞いて心を熱くしたものです。
写真はCDですが、SP盤をさがしてずいぶん歩きまわった想い出があります。
今でも時々、自分が作った真空管のアンプでこのSP盤を聞きますが、いまだにあきることはありません。アーティ・ショウは44歳でクラリネットを置いて、それから死ぬまで人前で演奏することはなかったといいます。
その理由は、自分の演奏が人前でお金を取って聞かせることができるレベルではないと悟ったからだそうです。
なんとすばらしいことでしょう。
今、どんどんCDを出しているジャズメンに聞かせてあげたいくらいです。
50年以上も前のアーティ・ショウのレコードを聞いても今のジャズメンは絶対かなわないすばらしさなのに。
おそらくアーティ・ショウは、音楽の本質を理解したのだろうと思います。この本質についてはこれから私が自分なりに解釈したことを書いてゆくつもりなのでここでは書きませんが、
楽器を練習してうまくできるようになると、おごりが出てきます。
それに気付くか、気付かないかでそのミュージシャンの価値が大きく違ってきます。
メンタルな部分での熟成のない音楽は、私には雑音でしかないのです。

 


No.17
「セレソン」小野リサ

早いものでもう一年が過ぎてしまいました。今は12月ですが、このコラムが掲載されるのは年が明けて1月です。
最近あるリスナーの方が言っていたことが、私は頭から離れません。それは、「ジャズのライブをいろんなところに聞きに行っているが、どこのライブもみんな同じことをやっているのでもういいや」ということです。日本でもニューヨークでも、地方でも東京でも、です。ジャズとは何かというと、例えばビバップを上手に演ること、新主流派を上手にマネすること、フリーをそれらしく演ること、ネスティコ等のアレンジを上手に作業すること、に成り下がっています。
求めているものがみんな同じなので何種類かのパターンになっていくのはしかたがありません。けれど、ボーカルにしても、よく歌は楽器と同じだという人がいますが、そんなことはありません。歌には詩があります。ボーカルが楽器と同じだという人はおそらく一生音楽を本質的に理解することはないでしょう。ボーカルには、ありふれたジャズや、その他の音楽を歌い手の独特の世界にできる可能性があるのです。そんな歌手の一人に小野リサがいます。確かにジルベルト、ジョピンの延長上にあるのですが、徐々に彼女自身の世界を築きつつあります。

 


No.16
エロール・ガーナー

最近まで暑くてエアコンを入れていたのですが、もう寒くなり、秋の深まりを感じるようになりました。この時期になると大学祭の想い出がよみがえってきて、すこしセンチメンタルになる人も多いのではないでしょうか。

学生時代、私がジャズに初めて接した頃の有名なスタンダードナンバーに「MISTY」という美しい曲があります。紹介する必要のないくらい有名な曲なのですが、本当に美しい曲です。ピアニスト、エロール・ガーナーの作品ですが、おそらく「I WANT ABOUT YOU」のコード進行を基に作ったのではないかと思われます。けれど、それよりもはるかに美しい曲です。よくジャズミュージシャンのセッションで演奏されることが多いのですが、できたらアドリブはしてほしくないですね。テーマ以上に美しいアドリブはできるわけはないので。

今月のレコードは、そのエロール・ガーナーのSP盤で「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」と「君微笑めば」のカップリングです。エロール・ガーナーやアーマッド・ジャマルのようなピアニストは、CDやLPではなくSPで聴くと美しさが倍増されます。

 
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