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No.45
「SONGS FOR YOUNG LOVERS」フランク・シナトラ
先日、若手のMというアメリカのボーカリストがテレビに出ていました。今、絶賛されているようですが、私には最低の音にしか聞こえませんでした。シナトラだったり、ディーン・マーチンだったり、ボビー・ダーリンだったり、チェット・ベイカーだったりと、何ひとつ自分のものを持っていないのです。アマチュアならコピーの段階でも十分ですが、それでお金をもらっているならば許されることではありません。
例えばゴッホの絵の贋作は、いくらそっくりにできていても一円の価値もないということに気付かなければなりません。絵画だけではなく音楽も同じです。特にCDを発売するということは、自分の才能のなさを示しているようなものです。自分の前に鏡を置いて、その恥ずかしさに気付いてください。
私は若い時からシナトラのレコードをよく聴きます。100枚ぐらいあるレコードの中でこの「SONGS FOR YOUNG LOVERS」が一番好きです。1953年の録音ですが、このレコードは当時の10インチ盤のオリジナルです。後に「SWING EASY」とカップリングされて12インチ盤になりました。ネルソン・リドルのアレンジとシナトラの声が絶妙なブレンドで、この世界にひきこまれてゆきます。現代の人間がこれと同じようなことをしても「SONGS FOR YOUNG LOVERS」以上の作品に仕上がるはずがないのです。本物をたくさん聴いて、自分がやるべきことを見つけてください。 |
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No.44
「SINGS COLE PORTER」ディオンヌ・ワーウィック
作曲家コール・ポーターはミュージカル音楽としてではなく、ジャズメンにとってはアドリブの素材の作曲家として多く知られているのが非常に残念です。フレッド・アステアをはじめ、多くのハリウッドの役者がポーターの曲で踊り、歌い、愛をかたったということを忘れてはなりません。
そんなコール・ポーターの作品集を昔からたくさんのミュージシャン、シンガーがレコードにしています。しかし、どんなレコードを聴いても、コール・ポーターの曲でなくても良いのではないか、という音造りが多いようです。つまり、ポーター本来のメロディの美しさ、エキゾチックな表現よりもコード進行、小節数だけでポーターを表現しようとしているジャズのレコードが多いと思います。従って、ポーター本来の音を理解して演奏しているジャズのレコードは無に等しいということになります。
しかし、ディオンヌ・ワーウィックは違います。これこそ私が今まで聴いた中で最高のコール・ポーター集です。ミュージカル作曲家が何を表現しようとしているのかを理解するには、オリジナルの映画を観るのが一番よくわかりますが、ディオンヌ・ワーウィックは映画のワンシーンを想像させてくれるほどすばらしい音造りをしています。まあ、ジャズのアドリブにしか興味のない子供には豚に真珠だと思いますが。 |
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No.43
「SPRINGTIME IN THE ROCKIES」
今月はレコードではなく、1942年のミュージカルのビデオです。主演はベティ・グレイブルですが、ハリー・ジェイムス楽団をバックに「I HAD THE CRAZIST
DREAM」を歌うヘレン・フォレストが出演しています。この時期のアメリカのミュージカル映画には私の大好きな歌手が多く出演するものが多く、動き、歌う彼女たちの映像を観ることができるのは最高の幸せです。ただ、日本ではなかなか入手することが難しく、私はほとんどアメリカで探して入手しています。
ヘレン・フォレストはこの他にもエスター・ウィリアムズの『BATHING BEAUTY』、リザベス・スコットの『YOU CAME ALONG』、アンドリューズ・シスターズの『PRIVATE
BUCKAROO』にも出演して歌を聴かせてくれます。レコードやCDだけでなく、当時の実際の映像を観ることによって、より深く歌の内容や表現を受けとめることができるようになり、歌手や楽団がすごく身近に感じることができます。
今、ジャズメンに多く演奏されるスタンダードナンバーにはみんな、ドラマや映像があるということをわかってください。アドリブの素材ではありませんよ。 |
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No.42
「SOMETHING COOL」JUNE CHRISTY
このアルバムは、ジャズファンなら知らない人はいないと思います。私はジューン・クリスティには特別な思い入れがあります。30数年前、初めて買ったボーカルのアルバムがこの「SOMETHING
COOL」なのです。以来とりつかれたようにボーカルのアルバム聴きあさりました。彼女は来日したことがありますが、私は一度も生の彼女の声を聴いたことがありません。しかし、ビデオを10本ぐらい持っていて、歌うときのまなざしや表情がすごく好きで、何度も観ています。
彼女はスタン・ケントン楽団時代を含め、何十枚もアルバムを出していますが、この「SOMETHING COOL」が一番好きです。特に1曲目のSOMETHING
COOLと続く2曲目のIT COULD HAPPEN TO YOUは何度聴いてもまた聴きたくなるほどすばらしいです。
彼女は1990年の6月21日に亡くなっていますので、もう生の声を聴くことは不可能ですが、こうしてレコードやビデオで、私の中では、生きて語りかけてくれます。彼女が本当に亡くなるのは、私や他の彼女のファンが全員この世からいなくなって誰も彼女の歌を聴くことがなくなったときです。しかし、おそらく本物の芸術は永遠に生き続けることでしょう。 |
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